法人を設立すると、個人事業とは異なる多くの税金が関わってきます。「いったいどんな税金をいつ支払えばいいのか?」と不安になる方も多いはず。この記事では、法人が支払う税金の全体像と、それぞれの納付時期をカレンダー形式でわかりやすく紹介します。
1. 法人税等(法人税、住民税および事業税)
法人の所得(利益)に対して課される税金です。構成するのは以下の4種類:
- 法人税(国税)
- 地方法人税(国税)
- 法人住民税(地方税)
- 法人事業税(地方税)
このうち、法人税・地方法人税は税務署へ、法人住民税・法人事業税は地方自治体(本店や支店がある都道府県と市区町村)へ申告・納付します。
税額の目安と支払時期
法人税等(法人税+地方法人税+法人住民税+法人事業ぜい)の税率は、一般的な中小企業でおおよそ「利益の30〜40%程度」が目安です。
※税理士法人でお客様に対して目安を説明する際は、大体、当期純利益が1,000万円くらいまでは30%、それ以上の場合は40%で概算額の計算をしていました。(あくまで目安ですが)
申告・納付期限は、「決算日の翌日から2ヶ月以内」です。例えば、3月決算の法人なら、5月31日が納付期限になります。
また、「赤字で利益がないから、法人税はかからないの?」と思われるかもしれませんが、法人住民税には「均等割」という、赤字でもかかる最低税額が存在します。
たとえば、東京都で資本金1,000万円以下、従業員50人以下の法人は、年間7万円の均等割が発生します。
2. 消費税および地方消費税
2年前の売上が年間1,000万円を超える法人は、消費税および地方消費税の申告・納付義務があります。
法人が売上にかかる消費税に対して、仕入や経費として支払った費用の消費税分を控除できる「仕入税額控除」を計算し、最終的に「売上にかかる消費税−仕入にかかる消費税」の差額を納税する仕組みです。
納付スケジュールとインボイス制度
原則として、「決算日の翌日から2ヶ月以内」に消費税も法人税とあわせて納付します。課税売上が多い場合は「中間納付」や「予定納税」が発生することもあります(※詳細は別記事で解説予定)。
また、2023年10月から始まったインボイス制度により、免税事業者との取引で仕入税額控除ができないケースも出てきました。この影響は法人にも大きく関わってきます。
👉 詳しくは インボイス制度をわかりやすく解説|免税事業者に与える影響とは? をご覧ください。
3. 源泉所得税(給与・報酬の支払い時に)
法人が給与や報酬を支払う場合、源泉徴収義務が生じます。これが「源泉所得税」です。
アルバイトやサラリーマンとして給与をもらう際に、税金が天引きされていたという記憶はないでしょうか。これが「源泉所得税」です。
アルバイト等に給与を支払った企業や個人事業主は、ルールに従って源泉所得税を天引きし、その天引きしたお金を全て税務署に納付する必要があります。
※これを計算せずに給与を渡していた場合、後から徴収する必要があるので注意しましょう。
原則(月ごとに納付)
給与や報酬から源泉徴収した税金は、支払月の翌月10日までに納付します。たとえば、2月分の給与を3月25日に支払った場合は、4月10日までに税務署へ納付が必要です。
納期の特例(半年ごとの納付)
従業員が常時10人未満の小規模法人は「納期の特例」を利用できます。これにより、年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめて納付することが可能です。
納期の特例を利用するためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出する必要があります。提出期限は特に設けられていませんが、申請書を提出した後に支払った給与等に適用されるため、利用予定の方は早めに提出しておくのが安心です。
4. 償却資産税(固定資産にかかる地方税)
法人が所有する固定資産のうち、建物や自動車以外の「償却資産(機械、設備、事務機器など)」を所有することに対してかかる地方税です。対象資産の評価額に応じて課税されます。
※建物や自動車は償却資産税とは別で、固定資産税や自動車税が課せられるので償却資産税の対象外(申告不要)
- 対象:毎年1月1日時点で所有する償却資産
- 課税対象となる者:税法に基づく価値(評価額)が、合計で150万円以上の資産を所有する人
例えば、デスクトップPC10台+サーバー設備などを導入した企業では評価額が150万円を超える可能性がありますが、ノートPC1〜2台しか所有していないようなエンジニア系の法人では課税対象にならないケースもあります。
こんな業種は要注意
- 製造業、設備の多いクリニック、美容室など → 評価額150万円を超えやすい
- ITエンジニア、ライター、コンサルタントなど → 評価額150万円を超えにくい
申告と納付のスケジュール
- 1月1日時点の所有資産を、1月31日までに市区町村へ申告
- 納付は原則年4回(6月・9月・12月・翌年2月)
5. その他のケースでかかる税金(状況別に解説)
車両を購入したとき:自動車税・自動車重量税
- 自動車税:都道府県に納付(4月1日時点での所有者)
- 重量税:車検や登録時に納付
契約書を紙で作成したとき:印紙税
- 例えば、不動産売買契約書、金銭消費貸借契約書などに貼付が必要
- 電子契約の場合は印紙税が不要なため、電子契約への切り替えで節税効果も
不動産の登記をしたとき:登録免許税
- 資本金の変更や役員変更など、法務局への登記時に納付
従業員が多い事業所:事業所税(特定の都市のみ)
- 対象:従業員数100人以上、床面積1,000㎡以上など
- 東京23区や福岡市など、一部自治体でのみ課税される
法人の税金カレンダー(納付スケジュール一覧)
月 | 法人税・消費税 | 源泉所得税 | 償却資産税 |
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1月 | 12月分:1/10納付 ※納期の特例:7〜12月分を1/20納付 | 1/1時点での資産を1/31まで申告 | |
2月 | 1月分:2/10納付 | 第4期 納付 (※翌年2月) | |
3月 | 2月分:3/10納付 | ||
4月 | 3月分:4/10納付 | ||
5月 | ※3月決算の場合 法人:法人税・消費税の申告・納付(5/31まで) | 4月分:5/10納付 | |
6月 | 5月分:6/10納付 | 第1期 納付 | |
7月 | 8月分:7/10納付 ※納期の特例:1〜6月分を7/10納付 | ||
8月 | 7月分:8/10納付 | ||
9月 | 8月分:9/10納付 | 第2期 納付 | |
10月 | 9月分:10/10納付 | ||
11月 | 10月分:11/10納付 | ||
12月 | 11月分:12/10納付 | 第3期 納付 |
※カレンダーの内容は一例です。実際の納付スケジュールは各法人の決算期や税務処理方法によって異なりますので、必ず顧問税理士または税務署に確認してください。
※納付日が土日祝に該当する場合は、納期限が翌平日となります。
まとめ
法人が支払う税金には、所得にかかる「法人税等」をはじめ、消費税、源泉所得税、償却資産税、そして特定のシチュエーションで発生する税金まで多岐にわたります。
それぞれの納付スケジュールを理解し、早めに準備しておくことで、税務リスクや資金繰りのトラブルを回避できます。特に設立1〜2年目は税金の種類や時期を見落としがちなので、この記事を参考に自社の年間計画を立てていきましょう。